テクニック」カテゴリーアーカイブ

テクニックを学ぶ目的とは?

最近、ほぼざざっと読み終えた本、『ピアノ・テクニックの科学ープロフェッサー・ヤンケのピアノメソード』(アンスガー・ヤンケ+晴美・ヤンケ著/アルテスバブリッシング)はなかなかすごい本でした。ピアニストで教育者であったアンスガー・ヤンケさんは、ピアノテクニックの学習において一般的に行われている練習方法(ハノンやツェルニーなど)もバサバサと切り捨て(さんざんやりましたよ(^_^;))、何がよりよい方法なのか、深く追求しています。「楽器、及び身体(腕、手)の構造が演奏動作の条件を定める」(引用)ということを前提として。

「はじめに」のところで、テクニックを学ぶ真の目的を述べたアンスガー・ヤンケさんの言葉が紹介されています。

テクニックがすべてではない。この言葉はもちろん正しい。表現したいと思うものを何も持たない人は、最良のテクニックをもっても伝えることはできない。しかしながら同時にこうも言える。演奏者が感じ、イメージした響きのニュアンスが、目的に適った動きとなって楽器演奏に実現される瞬間では、テクニックがすべてである。「動きに」に変換させないのであれば感性も思考も響きとなっては表れず、演奏はごく個人的な領域に留まって、聴衆に本物の感動を呼びおこすことはない。

ああ本当に、表現したいことをうまく伝えるためのテクニックはまだまだ磨いていきたい!と思っています。自分の曲だからなおさら表現したい気持ちは持っているけれど、私のイメージではもっといい感じ(笑)。

ちょうど今の私にとって役に立ちそうなことを発見したので、早速練習に取り入れています。けっこうわくわくしながら。

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美しい音をめざして

何年か前、『アルド・チッコリーニ わが人生』(パスカル・ル・コール著/全音楽譜出版社)を読んで、とても印象に残っている箇所があります。

アルド・チッコリーニが5歳で初めてピアノを習った時の先生が言った言葉です。

「アルド、綺麗な音を出して頂戴! 私に美しい音を下さい! とても表現力に富んだ麗しい音の調べが欲しいの」

ちょっとショックなくらい、感心しました。レッスンを始めた時から、自分の出している音を意識させるとは、とてもすばらしいことだと思いました。

私の子どもの頃の経験ではあまりそのようなことはなく、ちゃんと弾けるまでなかなか次に進めないという、どちらかといえば技術的な面について厳しかった記憶があります。ある程度弾けるようになってから、表情をつけていくよう指導されていたような。記憶はあいまいですが。

私が美しい音に目覚めたのは、きれいな音の生演奏で感動して、そういう音で弾きたい!と思ってからですね。確か。

前回書いた『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』は、ざっと読み終えましたが、ピアノを弾くのによりよい腕のポジションや、背中などへの意識とか、いくつかこれはいつも意識しておこうという点を再確認。

この本には、ピアノのマッビングについても書かれていますが、身体のこと、ピアノのことを知り、そして耳を澄ませて音を「聴く」ことが、より良い音を出すために大切なことでしょう。

これからも、美しい音をめざして修行を続けます!

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ボディ・マップ

『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』(トーマス・マーク他著/春秋社)を読んでいます。以前一度読んでいますが、その時とてもいいことが書いてあると思い、実際弾く時に試してみて意識していることがありますが、最近またボディ・マッピングなどについて人と話す機会が何度かあり、もちろん忘れている部分もたくさんあると思うし、もう一度読んでみようと思いました。

まず「ボディ・マップ」について書かれています。

「私たちの身体の位置や状態、動きは、脳の中でしっかりイメージされていて、このイメージを用いて全身の動きを協調させているのです。この脳内イメージこそがボディ・マップと呼ばれているものなのです」

このボティ・マップは変化するもので(例えば身体の成長に伴って)、

「あいまいだったり詳細だったり、正確だったり不正確だったりします」

一方、

「身体というのはある決まった構造をしており、その能力の範囲内でしか動かないのです」

つまり、実際の体の構造や動きとボディ・マップのギャップが大きいと、色々問題があるということです。ピアノ演奏でいうなら、間違ったボディ・マップによる力みや不自然な動きによって演奏の質を損なったり、手などの故障の原因となる。

ボディ・マップの質をあげること(イメージを実際の体の機能に近づける)が、演奏の質を上げ、故障の原因を減らすことになるわけですね。

良い演奏のためには、身体のことをちゃんと知った方がいいですね。演奏もダンスなど他のパフォーマンスと同じように、心身を切り離して考えることはできないものだと思います。内面を表すためには、身体をうまく使いこなさなければならない。この本でも次のように書かれています。

「音楽を奏でるために、身体と一体化した自己(セルフ)を動かす」

(ちょっとわかりにくい表現のような気もするのは、元が英語だから?)

良いボディ・マップは演奏家だけに限らず、スポーツをする人、また全ての人が体のトラブル(腰痛など)を回避するのに有効だと感じます。

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音の種類とピアノの音

『楽典 音楽家を志す人のための』(菊池有恒著)の中に、音の種類について書かれている部分があります。
「音は振動(vibration)の状態によって純音・楽音・噪音に分けられる。
純音(pure tone)
強さと高さは明瞭であるが、倍音を含んでいないため音色の差はなく、機械を通して見た振動の波形は単純である。普通の楽器からはほとんど出せないが、純音に近いものとしては、時報の音、音叉の音などがある。
楽音(musical tone)
声や大半の楽器が発する音で、強さ、高さのほかに、発音体の構造によるさまざまな倍音が含まれているため音色も明瞭である。振動の波形は倍音が含まれるため複雑であるが、規則正しく繰り返される。
噪音(unpitched sonud)
強さと音色は明瞭であるが、音の高さ(pitch)は不明確である。したがって振動の波形は複雑で不規則である。物のこわれる音、ぶつかる音、打楽器類の打撃音などがこの部類に入る。ピアノやピッチの明瞭な打楽器類は、打った瞬間は打撃による噪音を発し、その直後に規則的な振動による楽音が持続している。このように噪音と楽音の同居した楽器は多い。
なお、やかましい音は騒音(noise)という。」
ピアノを打楽器というのは違和感がありますが、打弦楽器とも言われるのは、鍵盤を打つ(弾く)という行為があるからですね。
私は毎日ピアノを弾いていて、弦が鳴っていることを常に感じているので(うっとり(笑))、どちらかというと弦楽器という意識を持っています。打つ(弾く)という行為は弦を響かすためだから。
上記引用文の中に、「ピアノやピッチの明瞭な打楽器類は、打った瞬間は打撃による噪音を発し」とありますが、これはこれは鍵盤をタッチした瞬間に生じる上部雑音と、鍵盤が底に当たった時に生じる下部雑音のことだと思います。これらをコントロールすることについては『ピアノの演奏と知識』(雁部一浩著)や、内藤晃さんの『ピアノでオーケストラを』(ユーロピアノ)にも書かれています。
私はなかなかそんなにうまく使い分けられてないと思いますが、特に繊細な音を出したい時には雑音のことを意識してより耳を澄ましてみています。

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