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自然と芸術

ストラヴィンスキーの『音楽の詩学』(未來社)の中の第2課「音楽現象について」の中に次のような記述があります。
「私は、それ自体として心地よく、耳を愛撫し、完全たりうる喜びを私たちにもたらす基礎的な音響、生の状態の音楽素材の存在を認めます。けれども、そうした受動的な快感の彼方に、私たちは、秩序づけ、活気づけ、創造する精神の操作に私たちを積極的に関与させる音楽を発見しに赴くのです。というのも、あらゆる創造の根源には、地上の糧に対する渇望ではない渇望が見出せるからです。そのようなわけで、自然のたまものに、策略―それこそが、芸術(アート)(技術)の一般的な意義です―の恩恵が加わります。」
(この中の「基礎的な音響」、「生の状態の音楽素材」とは前述している「木々をわたる微風のささやき」「小川のせせらぎ」「鳥の歌」などのことだと思います)
受動的な感動を得られる自然の音と、それとは別に意思をもって人が作り出す音楽(芸術)というものの違いを明確に表現した文章だなと思いました。翻訳されているから原文とのニュアンスの違いがどの程度かわかりませんが、簡潔でしっくりくる表現です。

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