「ソノリティ」という言葉をご存知でしょうか?
『目指せ!耳の達人~クラシック音楽7つの”聴点”~』(宇野功芳/山之内正著/音楽之友社)の中の、「Ⅴ 録音はどこまで音楽を伝えるか」という章の中にその言葉がでてきます。一部引用します。
泣けるpp
(前略)
宇野 ぼくもppの効果は実感していますが、本当のppというのはホール全体を満たしていくものだと思っています。それは演奏者がffを出すのと同じくらいの気迫を持って出す必要がある。ただ弱くしただけではあの効果は出ないんです。ppがきちんと表現できる演奏家というのは、優れた演奏家だとぼくは思います。
山之内 ただ音を弱くすると音色的に破綻しますから、そうならないよう響きを保ちながら、でも息を飲むようなppを出すということですね。
宇野 最近のピアニストではアリス=紗良・オットのppが凄かったなあ。《エリーゼのために》を全部弱音で弾いたのですが、これは美しかった。聴こえるか聴こえないかくらいの音量なのですが、ソノリティがあるのでぐっと来るんです。ところが、CDだとただ弱いだけに聴こえてしまう。内田光子がアンコールで弾くモーツァルトの《ソナチネ》第2楽章も全部弱音で、あれにもだいぶ泣かされました。
山之内 でも、その場で聴かないと、素晴らしさが伝わらない。
宇野 マイクに入らない演奏というのもあると思う、ぼくは。
山之内 弱音もそのひとつですね。
宇野 でも、だからこそ良いんですよ。
ソノリティは、この本によると「声と楽器の響きや聴こえのこと」で、優れたソノリティとは、明瞭で聴き取りやすい音のことだそうです。
朝比奈隆さんがリハーサルで「pでもソノリティがない音はダメだ」と言っていたという話も紹介されています。
実は、以前この本は一度読んでいて、ソノリティという言葉は忘れていましたが、小さくて美しい音の話が印象に残っていました。
クラシックでは小さい音から大きい音まで、とても幅が広い表現がありますが、自分のオリジナルではあまり大きな音で弾くことは多分ないので、特に小さな音を丁寧に表現していけたらと思っています。