月別アーカイブ: 2017年6月

美しい音をめざして

何年か前、『アルド・チッコリーニ わが人生』(パスカル・ル・コール著/全音楽譜出版社)を読んで、とても印象に残っている箇所があります。

アルド・チッコリーニが5歳で初めてピアノを習った時の先生が言った言葉です。

「アルド、綺麗な音を出して頂戴! 私に美しい音を下さい! とても表現力に富んだ麗しい音の調べが欲しいの」

ちょっとショックなくらい、感心しました。レッスンを始めた時から、自分の出している音を意識させるとは、とてもすばらしいことだと思いました。

私の子どもの頃の経験ではあまりそのようなことはなく、ちゃんと弾けるまでなかなか次に進めないという、どちらかといえば技術的な面について厳しかった記憶があります。ある程度弾けるようになってから、表情をつけていくよう指導されていたような。記憶はあいまいですが。

私が美しい音に目覚めたのは、きれいな音の生演奏で感動して、そういう音で弾きたい!と思ってからですね。確か。

前回書いた『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』は、ざっと読み終えましたが、ピアノを弾くのによりよい腕のポジションや、背中などへの意識とか、いくつかこれはいつも意識しておこうという点を再確認。

この本には、ピアノのマッビングについても書かれていますが、身体のこと、ピアノのことを知り、そして耳を澄ませて音を「聴く」ことが、より良い音を出すために大切なことでしょう。

これからも、美しい音をめざして修行を続けます!

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ボディ・マップ

『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』(トーマス・マーク他著/春秋社)を読んでいます。以前一度読んでいますが、その時とてもいいことが書いてあると思い、実際弾く時に試してみて意識していることがありますが、最近またボディ・マッピングなどについて人と話す機会が何度かあり、もちろん忘れている部分もたくさんあると思うし、もう一度読んでみようと思いました。

まず「ボディ・マップ」について書かれています。

「私たちの身体の位置や状態、動きは、脳の中でしっかりイメージされていて、このイメージを用いて全身の動きを協調させているのです。この脳内イメージこそがボディ・マップと呼ばれているものなのです」

このボティ・マップは変化するもので(例えば身体の成長に伴って)、

「あいまいだったり詳細だったり、正確だったり不正確だったりします」

一方、

「身体というのはある決まった構造をしており、その能力の範囲内でしか動かないのです」

つまり、実際の体の構造や動きとボディ・マップのギャップが大きいと、色々問題があるということです。ピアノ演奏でいうなら、間違ったボディ・マップによる力みや不自然な動きによって演奏の質を損なったり、手などの故障の原因となる。

ボディ・マップの質をあげること(イメージを実際の体の機能に近づける)が、演奏の質を上げ、故障の原因を減らすことになるわけですね。

良い演奏のためには、身体のことをちゃんと知った方がいいですね。演奏もダンスなど他のパフォーマンスと同じように、心身を切り離して考えることはできないものだと思います。内面を表すためには、身体をうまく使いこなさなければならない。この本でも次のように書かれています。

「音楽を奏でるために、身体と一体化した自己(セルフ)を動かす」

(ちょっとわかりにくい表現のような気もするのは、元が英語だから?)

良いボディ・マップは演奏家だけに限らず、スポーツをする人、また全ての人が体のトラブル(腰痛など)を回避するのに有効だと感じます。

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即興にトライ

先週のダルクローズリトミックの月例会で、リズム、きれいな和音、メロディアスなメロディを使わない、音の表現のピアノ即興に合わせて他の人が思い思いに動く(ダンスのよう?)という試みがありまして、交代でピアノを弾いたり、体を動かしたりしたのですが、これは私にとって初めての音楽的にしないことを意識した即興演奏でした。

順番がまわってくるまで、できるかな?という思いがありましたが、やってみると面白い。
音楽的にしない、音を素材としたアート表現をしている気分でした。それでも多分、全然音楽をやってない人とは違う表現になるんじゃないかな? 自由な即興といっても直前に次の音をイメージしながら、なるべく耳障りにはならないようにと考えたので。
以前、即興のイディオムについて書いたことがありますが、イディオムによらない即興はその時何が出てくるかわからない、偶然の面白さがある。でも、多分意識してなくてもイディオムの代わりに、どこかにクラシック音楽がベースになっているかもしれないと思いました。他の人がどんな風に感じたかはわかりませんが、自分としては、こんなこともできるんだという楽しい経験となりました。コラボレーションというスタイルがまた楽しい!