月別アーカイブ: 2021年2月

音色に目覚めたできごと

もう何年も前になりますが、ポーランドのピアニスト、アンジェイ・ヤシンスキ教授の公開レッスンを見に行ったことがあります。その時の経験が私がピアノの音色に目覚めるきっかけになったと思っています(確か)。公開レッスンですから、先生は自分のリサイタルのようには演奏されないわけですが、合間合間にさらっと見本に弾かれます。その時に聴いたヤシンスキ教授のモーツァルトにはっとさせられたのです。気楽に弾いている感じなのになんという音色。ピアノからあのような音が出るのかと(ちなみにヤシンスキ教授はショパンとモーツァルトがお得意なようです。ボーランド出身ですからね、ショパンコンクールの審査員もされている)。

それからしばらくは、モーツァルトを少しでも美しく弾くことに挑戦していました。下部雑音が混ざらない方がいいのかとか、色々研究もしました。下部雑音を意識しすぎると、打鍵が浅めになり不安定になる。それで、ピアニスト内藤晃さんが書かれた「ピアノでオーケストラを」という冊子を読んでいると、「下部雑音の有無を用いて音色をコントロールする」ことについてなど書かれていて、そうか、曲にもよるだろうけど使い分けが必要なのかと思ったり。なかなかイメージしている演奏には近づけない(汗)。

まあ、そんな経緯があって、音色というものにより注意がいくようになったのです。
ここ何年かは自作曲を作って弾くことが多かったのですが、テンポがゆったり気味でシンプルなものが多い。そうすると自然と出している音一つ一つがわりと良く聞こえて、音質チェックができる。それで、ピアノの残響がきれいなあとか感じているのですが、これはまさに倍音を楽しんでいるんだなと思っていました。

なので、最近読んだ『ロシアピアニズム』(大野眞嗣氏著/yamaha music media)に倍音を響かせる弾き方について書かれていたのを見て、自分はわりとそのつもりなんだけどなあと思っていました。

そして、前回の記事で書いた話につながるのですが、調律師さんが弾き方によって基音と倍音のバランスが変わり音色が変わるということをピアノの構造から説明されるのを聞いて、改めてさらに倍音を響かせる弾き方があると認識しました(何も考えずに弾いても弦は共鳴するから倍音は出ているんだけど)。

そして、松田紗依先生のレッスンで目の前でタッチの違いによる音色の違いを聞いて、感動したわけです(笑)。

今回この記事を書くにあたって、内藤晃さんの「ピアノでオーケストラを」、『ピアノの演奏と知識』(雁部一浩著/音楽之友社)→(この本は確か音色に目覚めるよりずいぶん前に読んだのですが、当時、ピアノの構造上、ピアニストが意図的に操作できるのは音の「長さ」と「大きさ」だけ(雑音効果をのぞき)と書かれているのに対して、そんなもんだろうか?と思っていました。今回、それは違うだろうと思えるようになりました)、そしてヤシンスキ教授の公開レッスン時のメモをチェックしました。

そのメモの中に、「打鍵後、リボンを引っ張るようにその強さを変える」というのがありました。これがもしかしたら、鍵盤の上で指をすべらせる倍音を響かせるタッチのことだろうかと、今頃思いいたりました。当時はメモはしていたけどそこまで考えていなかったと思う。けれど、メモしておいて良かった(笑)。

ヤシンスキ教授の演奏、生で聴く機会はもうないでしょうけど、YouTubeにあったのを見つけました。

それとはまた別に、たまたまYouTubeで倍音について説明されているジャズピアニストの動画を見つけて、なんとなく聞いていたんですが、一通り説明が終わったあと、質問者が、ピアノを弾かれるとき倍音を意識されていますか?と尋ねると、そのピアニストは少し考えてから、いえ、ほとんど意識しません、その他のことに意識がいっているのでと答えられていました。ジャズピアニストの場合、やはりアドリブとか考えることがいっぱいあって大変なのかもしれません。また音数の多い、速い曲などの場合もそういう響きを感じるチャンス自体少ないかもしれない。

ピアノという楽器は音と音の間に段差があり(半音、例えばドとドのシャープの間は音がない)、弦楽器や歌に比べ、「歌う」点において不利な楽器で、不利な点を補う方法の一つとして倍音を生かすというのがあると思います。

先日のレッスンで、松田先生がチッコリーニのテクニックについて弾きながら説明されました。チッコリーニ……すぐに思い出せなかったけど、音源も持っているし、以前本も読んだことがあるのを思い出しました。その本についてブログに書いていたことがあります(美しい音をめざして)。その中からの引用です。

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アルド・チッコリーニが5歳で初めてピアノを習った時の先生が言った言葉です。

「アルド、綺麗な音を出して頂戴! 私に美しい音を下さい! とても表現力に富んだ麗しい音の調べが欲しいの」

『アルド・チッコリーニ わが人生』(パスカル・ル・コール著/全音楽譜出版社)

ちょっとショックなくらい、感心しました。レッスンを始めた時から、自分の出している音を意識させるとは、とてもすばらしいことだと思いました。

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『ロシアピアニズム』に、日本ではデュナーミク(強弱)によって変化をつけ、音色そのものにこだわる指導をしている先生は少ないというようなことを書いてありました。私も自分の経験を振り返り、確かにそういう傾向があるかなと思っています。

この3年ほど前の記事でも、「これからも、美しい音をめざして修行を続けます!」と書いてました(笑)。はい、まだまだ続きます(笑)。

ロシアン奏法を学びます

先日、ある先生からご紹介いただきロシアン奏法の松田紗依先生のレッスンを受けることとなりました。そして昨日、レッスンのためにアトリエ松田へ行ってきました。アトリエ松田はピティナのコンサート会場にもなっていて過去に何度か弾かせていただいたことがあります(ここ何年かは出たいなと思いつつ見送っていました)。先生も私のことを覚えてくださっていて、またお会いできてうれしかったです。このアトリエはもともと松田先生のおじい様の彫刻アトリエで、とてもいい雰囲気の部屋です。何年かぶりの、アトリエ松田のスタインウェイを弾いてその響きにうっとり。高い天井と木(木造)としっくい壁が音をまろやかにするのでしょう。

さて、ロシアン奏法ですが、ブログにも書いていますように、最近『ロシアピアニズム』(大野眞嗣氏著/yamaha music media)を読んだり、YouTubeなどでも解説を聞いたりして私なりに少しずつ勉強を始めていました。ロシアピアニズムという表現は、ロシア奏法とは違った意味合いで使われているように書かれているのを見ますが(定義が色々ある?)、イギリスでロシアン奏法を学び(英国王立音楽院教授スラミタ・アロノフスキー氏に師事され)、長年ロシアン奏法を研究・指導(教則本も多数作られています)されている松田先生がそのように表現されているので、これからそう呼びます。

日々、ピアノを弾いていて、自分がこれでいいのだろうか、どうだろうかとどこかで迷っていた部分が昨日いくらかクリアになった気がします。もちろん、それは始まりで、まだまだクリアになっていく部分があるのだろうなという予感もしました。先生がこの場合はこのように弾く、ここはこのように、という一つ一つにとても説得力があり、なるほどなるほどとうなずくばかり。どのようなタッチで、どのように響かせ音楽表現につなげるか、目からうろこが落ちる落ちる(笑)。

そんなレッスンの中で、タッチによって木の「しなり」が変わるというお話があり、ちょっと興奮しました(笑)。というのは、少し前に、ヨーロッパで活躍されている調律師さんが、YouTubeでピアノの構造から音色について考えることについて語られているのを見ていて、その中で鍵盤のタッチの仕方の違いで、ハンマーを動かすシャンクという部品が「しなる」という話を聞いたばかりだったからです。そのことにより、ハンマーが弦を打つ位置がほんの少し変わり、そのことによって基音と倍音のバランスが変わるということです。『ロシアピアニズム』にも倍音を増やし音色を豊かにすることについて書かれていましたが、昨日まさに、松田先生がタッチの違いによる倍音の響き方の違いを弾いて聞かせてくださいました。もう大納得です(笑)。

実は、何年か前、大阪梅田のKAWAIで行われた、松田先生とピアニスト関本昌平さんのセミナーに参加したことがあり、その時参加者全員がちょっとずつロシアン奏法のタッチについて体験するというコーナーがあり、ほんの短い時間先生から指導を受けましたが、その時はまだそれほどピンときていなかったんです。でも、昨日はビビビときました(笑)。

他に音楽の話など色々しましたが、先生が「縁」ですね、と言ってくださいました。私が音色にこだわって探求している中で、ロシアの奏法に改めて向き合い、結果教えを乞う形で松田先生の所へたどり着いたというのは、「縁」なのかもしれません。温かく迎えてくださって感謝感激です(笑)。

という感じで、しばらくはロシアン奏法の基礎を学びます!

アトリエにはいくつかのすてきな彫刻があります。
かわいいロシア奏法の本も見せていただきました。

手首はどこ?

『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』(トーマス・マーク他著/春秋社)には、正しいボディ・マップを知り、ボディ・マッピングする方法が書かれています。

ボディ・マップとは脳の中でイメージされている身体のことで、ボディ・マッピングとは、自分の身体に注意を向けるトレーニングによって筋感覚を鋭敏にし、それ以前には身体の外の世界にあった情報を自分の中に取り込むことです。

少しわかりにくいですが、わりと分かりやすい例(多分)について書きます。
皆さんは手首ってどこだと思いますか? 私は腕時計をつけたり、脈を測ったりするあたり、小指側のぼこっと出た骨の腕側と思っていました。ところがこの本によりますと、正しいボディ・マップでは、手首の骨というのはぼこっと出た骨の手の側、手の甲の根元あたりなんですね。そこに8個の骨が4個ずつ2段に並んでいてそこから指の骨につながっている。私なかなり意外に感じましたが、その8個の骨によって手を柔軟に動かすことができるのですね。

正しいボディ・マップをイメージしたら、今度はボディ・マッピングです。手首を回してみてください。確かに、腕時計をつけるあたりは回りませんが(ぼこっとした骨は肘までつながった1本の太い骨)、手の甲の根元あたりはわりと自由に動きます。この柔軟さを意識してピアノを弾くと、より余計な力を抜くことができると思います。もともとできていた人には関係ないかもしれませんが、手の甲をひと固まりのようにイメージ(無意識でも)しているのと、根元が自由であることを意識するのとでは変わってくると思います。手首の力を抜いてと言われても、ボディ・マップが間違っていれば違う所に意識がいってしまいますね。

この本は過去にも読んでいますが、改めてそうやったんやと思い返すところがいくつかあり、やはり面白いです。

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クラシックを弾く

今年から(と言ってももう2月後半ですが)またクラシックもちゃんと弾こうと思っています。というかもう始めていますが。ここ5~6年はどちらかというと曲作ったり録音したりということにピアノの時間の多くを使ってきました。もちろん、クラシックも弾いていましたがそれほど目的もなく、なんとなく中途半端でした。自分のゆったりした曲ばかり弾いていては、指がだんだん動かなくなるのではという危機感も多少あり(笑)、今年は人前でクラシックを弾く(なんかピアノのイベントに参加する?)ことをイメージして練習しようかなと思ったりしています。どうなるかわかりませんが。

練習の仕方も以前とは変わってきています。より一つ一つの音に耳を傾け「聴く」ようにしています。それはタッチや体の使い方とも密接につながっています。たとえ音数少ないシンプルな曲でも音色を美しく、人の心を動かすような演奏をすることは簡単ではありません。常に、丁寧に音と向き合うことを心掛けたい。児童館では電子ピアノでも、生演奏は違いますねと言っていただくことがありますが、そう言われるたびにぜひアコースティックピアノの音色を届けたいと切に思います。

曲作りをし始める前に弾いていたクラシック曲を弾くと、以前よりも多くの発見があり、それがとても面白い。そうやってぐるぐる行ったり来たりするのは、得るものが多いと実感しています。

逆ハの字?

少し前にとり上げた『ロシアピアニズム』(大野眞嗣氏著/yamaha music media)の本には、手の構えについて1の指を少しだけ前方に移動し、手のひらを逆ハの字のような斜めの状態にすると書いてあり、ここは「ん?」と思って何度か読み返しました。弾きにくそう。このことについて、YouTubeの動画でも説明されているピアニスト(ロシアピアニズムの)がいらっしゃるのですが、この手の構えをすると余計な力みが生じるので同意できませんでした。

それで、今読み返している『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』(トーマス・マーク他著/春秋社)には、手の構えについて「小指主導」であるべきだと書いてあります。つまり、上腕につながっている骨は、前腕の2本の骨のうち1本で、それが小指につながっているから小指側を軸とする方がいいということです。ロシアピアニズムの本に書かれていた1の指を前にするというのは、親指主導であり、それは手の故障につながりやすいということです。小指主導というのは、鍵盤に対し手を垂直に構え逆ハの字ではないので、こちらが普通だと思いますが。

たまたま続けて読んでる本で真逆のことが書かれているので、記事にしてみようと思いました。『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』は骨の構造を元に体の使い方を説明しているので説得力があります。

ロシアピアニズムについても、人によって考え方が少し違ったりするようですし、絶対これというのでもないのかなと思っています。

興味のある方の参考になれば幸いです。

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学びは続くよ

最近では、YouTubeなどで多くのピアノの先生、ピアニストなどがピアノの練習方法、奏法、音楽表現についてなどを実際に弾きながら説明する動画をアップされていますね。そのことによって色々な考え方、方法があることもわかります。昔なら、自分の習っている先生のやり方が一番正しいと皆思っていたかもしれないけれど、簡単に色々な情報にアクセスできる今は、何が正解なのかわかりにくくなっているとも言えると思います。

こういった動画を色々見ていると、初心者の人なら何をお手本にすればいいのか迷ってしまうだろうし、経験者でも自分のやってきた方法はこれでいいのか、考えさせられるかもしれません。

ただ、それは当然かもしれません。もともと音楽に「正解」などないのだからね。ずっと考えたり迷ったりしながら、やっていくものだと思います。まずは自分がどうなりたいのか、どんな音楽をどのように表現したいのかをイメージし、そのためには誰を見本にしたり、誰の考えを参考にしたりしてけばいいのか、共感できる人の力を借りながら自分で考え、学んでいくもんじゃないかなと思います。

今また『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』(トーマス・マーク他著/春秋社)をパラパラ読んでいますが(久々に読んでまた面白いなと思っています)、最初に読んだときにとても印象に残っている部分があります。もしかしたら、以前もブログで書いたかもしれません(今ネットに上げてる記事以前にも長年たくさん書いていてもはや何を書いたか書いてないか覚えていない)。

アルトゥール・ルービンシュタインが80歳を超えたころに言ったそうです。―「この歳になって、私はようやくピアノを学び始めた」と。
彼は60年以上のあいだ世界的に有名なピアニストであり続けたのですから、このような発言は冗談としか思えないものかもしれません。しかし、彼は本当に誠実な人でしたので、彼のこの発言は、新鮮さ、生命への愛、そして新しい経験を常に受け入れるといった、彼の性格と人生への姿勢を証明しているものであると、私は信じています。

P174

まるで次元の違う人の話ですが、その人にとっての目指すものはそれぞれで、学ぼうと思う限りずっと学ぶことになるんだろうなと思えます。

私も日々迷いながら、考え、試み、また考えと繰り返しています。でもそうやって向き合えるものがあることは幸せだなと思っています。80歳になってもルービンシュタインみたいなセリフを言えれば最高じゃないですか。それだけ前向きにやれているということだからね。


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感じ方が変わった??

今日はちょっと「あれっ」と思ったことがありました。何年かぶりにアルベニスの『プレガリア』という曲を弾いたんですが(弾くと言っても練習してないから、ゆっくり確かめるように)、以前はどうしても「泣ける」曲だったのが、今日は泣かなかった(笑)。弾く前からそんな予感はしていましたが、やはりその通りだった。

以前、ブログにこの曲について書いたことがあるんですが(『いつか弾きたい曲』)、なんか謎に琴線に触れる曲で、涙で譜面が見えない(だからまともに弾けない)という珍しい曲でした。

弾いてなかった何年かの間に、私に何が起こったのだろう(笑)。鈍くなったのだろうか(汗)。いや、先日『大きな古時計』を弾いていて泣きそうになったよ(笑)。

今日は必要以上に感情に流されず、曲をじっくり味わうことができました。ゆっくりと歌うように響きを聴きながら弾くのはとても心地がいい。考えてみれば、前述の記事を書いたころに曲を作り始めています。それから少しずつ音楽に対する向き合い方も変わってきた。それで、今日は作品としての興味も感じながら多少冷静に接していたと思います。それが理由かはわかりません。無意識の中で起こっていることは、わからないものだと改めて認識したのでした。これで、また機会があったら弾くことができそうです。

ちなみに、ずっと前に書いた『どうして涙が出る?』という記事は、私のブログ記事の中で最も読まれている記事です。今日は「どうして涙が出ない?」です(笑)。