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目を見て

前回マザリーズについて書きましたが、これまで赤ちゃんは目よりも耳がいいので、音によるコミュニケーションはより有効であると考えていました。
イベントの資料作りのために、参考文献にしている『赤ちゃんの心はどのように育つのか』(今福理博著/ミネルヴァ書房)を読み返してみて、また新たに以前はそれほど気に留めていなかった部分が気になりました。とても重要だと感じたことです。

それは、赤ちゃんは自分に語りかけている相手の目や口元を見ているということです。新生児のうちは視線が定まらない感じではあるけれど、ちゃんと赤ちゃんの目を見ながら話すということは意味があるということです。大人が思っている以上に赤ちゃんは目が合っている人の語りかけ、歌いかけに注意を払い、音(聴覚)と口の動き(視覚)で言葉を覚えていくようです。それがいつから始まるのかはっきりしているわけではないですが、実験では生後間もなくであっても口の形を見て模倣することができると確認されているようです。

赤ちゃんの視力は弱いので、目で確認するということについてこれまであまり重視していませんでした。以前、乳児の視力は0.01~0.02程度であると書かれているのを見て書き留めていたためですが(どの本であったか今はわかりませんし、そもそも乳児の時期があいまい)、今確認できるものを見ると、1か月児(新生児から乳児と呼ばれ方が変わる時期)の視力はおよそ大人の4分の1程度(この場合の基準となる大人の視力がわかりませんが)、乳児で30cmで焦点が合うということです(『発達心理学』(本郷一夫編/遠見書房)「知覚・認知の発達」)。抱っこした時に赤ちゃんからちょうどよく見える距離ですね。
資料によってばらつきがありますが、今回取り上げている参考文献によれば、これまで思っていた以上に早く見えるようになると言えそうです。生まれたては0.01程度でもその後少しずつ見えてくるようになるのでしょうから、乳児期に入ってまだ0.01というわけではないだろうということですね。ちなみに視力0.01の焦点距離は10㎝以下ということです。

赤ちゃんが声から学んでいく際に視覚も大事な要素であると認識しました。

また、マザリーズや歌いかけは赤ちゃんが好むわけですが、スピーカーを通してではあまり意味がないようです。

赤ちゃんにとっては人以外(たとえば、機械などの人工物)から伝達される情報の学習は、効果的ではないと考えられます。

『赤ちゃんの心はどのように育つのか』p.83

目を見て、直接語りかけたり、歌いかけることが大事なのですね。当然と言えば当然と思えますが。

また、感動したのは、歌いかけの効果です。
言葉の発達への影響に留まらず、心を落ち着かせ、その後の成長における内面の安定にもつながるのではということです。

本で書かれていることは、研究がもとになっていて、同じことをして同じような結果が得られるとは限らないと思いますが、目を見て語りかける、歌いかけることはお互いにとって心が安らぐことで、それだけでもよいことではないでしょうか。

私自身、これらのことを子育ての時に知っておきたかったと思います。知れば知るほど赤ちゃんの発達は早くから始まっていることがわかり、驚くばかりです。

マザリーズ

今まで何度か子育て講演会(音楽の話や演奏など)の中で「マザリーズ」について話しています。マザリーズとは、赤ちゃんに向けた、やや高めのゆっくりした抑揚のある話し方(母親語、乳児向けの話し方)のことを言います。赤ちゃんはマザリーズが大好きということです。

1月の後半から2週間ほど生まれて間もない孫と過ごしましたが、家中赤ちゃん言葉が飛び交っていました(笑)。理解できるはずはないけれど、色々と話しかけてしまう。その時、みんなマザリーズのような話し方になっていました。赤ちゃんがそれを好むかどうか知らずとも、赤ちゃんと向き合えば自然とそのような話し方になる感じがします。

生後半年の間、赤ちゃんが音から得ている情報は「音声のリズム」「抑揚(ピッチの変動)」「韻律情報(強さの情報)」と考えられているということです。

マザリーズは赤ちゃんにとってとらえやすい音(情報)であるのでしょうね。そして、マザリーズは普通の話し方よりもより音楽的ですね。子守唄はマザリーズから発生したのではないでしょうか。

赤ちゃんを見ていると、まだ何もわからなくても色々なことを感じているのだろうと思えます。おなかがすいたり、不快だったりすると泣く。抱っこして話しかけたり、体をさすったり、歌を歌ったりしてあやすと泣き止んで穏やかな表情になる(おなかすいている時は通用しないけど)。

赤ちゃんの感情表出はまず「興奮」と「不快」から始まる。けれども、他の感情も誕生時には備わっていると考えられているということです。

不快なのはわかる気がします。今まで(おなかの中)と全然違う環境に放り出されたのだから。

赤ちゃんは何も理解できなくても、何かを感じているはずと思えば、気遣いながら接することができます。なぜ泣いているのだろう? おなかもいっぱい、おむつもかえたところなのに。どこか痛いのかな? かゆいのかな? 不安なのかな? わからないのだけれど。

私が赤ちゃんや子どものことについて、専門書を読んだり、よく調べるようになったのは、10年ほど前児童館に行きだしてからです。自分の子育ての時はそこまで調べられていなかった。
自分が得て役に立つと思える情報は、自分の娘にもですが、子育てする人たちとも共有できればいいなと思っています。

3月には初めての保育所でお話と音楽のイベントをさせていただきますが、そこでもマザリーズについて話す予定です。

以下、これまでもご紹介していますが、参考文献です。 

特別な2週間でした

昨日、里帰りしていた娘と孫が帰っていきました。

2週間ほど前娘が退院後、初めて孫を見た時、なんと小さくてかわいいのだろうとときめきました。娘が写真や動画では伝わらないと言っていた意味がわかりました。新生児はあまり外に連れ出さないので普段外で見かけることはあまりないのですね。私も経験していることなのですが、新生児の小ささはすっかり忘れていたのです。

それからの生活は、普段とはがらっと変わって赤ちゃん中心になりました。普段の家事に加え、孫の世話のサポートで大忙し。昼夜問わず3時間おきに母乳とミルク、たびたびのおむつ替え、大量の洗濯物、必要なものの買い出しなど。
眠たくても昼寝する間もなし。ある程度予想はしていたものの、やはり大変。夫も手伝ってくれ、だんなさんが育休に入って来てくれるようになってからは少しましになりましたが。

それでも、孫のかわいいしぐさを眺めたり声を聞いたり、抱いたり、体をさすってなだめたりしている時の幸福なこと。小さくてやわらかくて愛おしい。他のことがどうでもよくなるほどの満たされた気持ちになります。
娘も大変なことを乗り越え、幸せそうで、何よりだと思っています。

睡眠不足できついけれど、愛おしくて仕方ないという気持ちで2週間ほどを過ごしました。

明日娘と孫が帰るという時になると、もうその後の寂しさを思って悲しくなりました。
歩いて15分くらいの所に住んでいるのですが、だんなさんが育休でしばらくずっと一緒なのであまり邪魔はしたくない。

いよいよ帰る時がきて、荷物を持って一緒に家まで送っていきました。
そして、バイバイ。

帰り道、涙があふれる。夫とこの2週間を振り返りながら、また泣ける。

今日も動画や写真を送ってくれたけど、それを見るとまた泣ける。愛おしい。
そんな感じで今〇〇ちゃんロス中です(笑)。

今日は久々にゆっくりピアノを弾きました。少し心境も変わっているように感じます。