月別アーカイブ: 2015年4月

初チェンバロ!

今日は左京区松ヶ崎の松雲荘というところで行われた、パブロ・エスカンデさんと三橋桜子さんご夫婦のチェンバロコンサートに行ってきました。
チェンバロを聴くのは2回目です。1回目は大阪のいずみホールで行われた久元祐子さんのレクチャーコンサートです(モーツァルトの)。その時は、チェンバロの他フォルテピアノ、現代のピアノと並べられ、作品の時代に合わせて弾き比べのような感じで演奏されました。その時はフォルテピアノがとても興味深く感じられ、チェンバロについては少ししか弾かれなかったこともあってか、あまり印象に残っていませんでした。
今日改めて聴いてみて、ペダルは無い代わりにとても音が長く残る楽器だなと思いました。部屋は普通の和室だというのに。特に連弾で弾かれると、たくさんの音が心地よく響きます。

帰ってから調べたんですが、チェンバロはピアノに比べてはるかに多くの倍音を含んでいるんですね。それが響きの豊かさの理由だったのかな。この感じはCDなどではわかりにくいですね。なんとなく乾いたような音に聞こえてしまう。
プログラムは、前半はバロックのフランスの作曲家の作品がメインでしたが、知らない作曲家ばかり。後半はバッハ。アンコールに桜子さんが弾かれたパブロさん作曲の現代風曲は、音源だけ聞けばチェンバロとはわからないのではと思えるくらい全く違った音に聞こえるのでとても不思議でした。
今回も選曲、演奏とも独自性があってとても聴きごたえのある素晴らしいコンサートでした。

終わってから、桜子さんが弾いてみてと言ってくださるので、好奇心いっぱいで少し弾かせていただきました。最初はモーツァルトのトルコ行進曲の最初の方を弾いて、思っていた以上に弾きにくいと思いましたが、さらにゆっくりの曲を弾いてみると、ものすごく弾きにくい。チェンバロは弦がはじかれて音が出る楽器なので(お琴みたい)、鍵盤を抑えるたびに何かひっかかる感じがするんですね。それで鍵盤が上がってくるタイミングがはかりにくい。早いテンポの曲だとある程度勢いがあるのでひっかかりがまだ少ない感じがするけど、ゆっくりの曲だともうひっかかりまくってるような。ピアノを弾くのとはずいぶんとタッチを変えないとうまくいかないことがわかりました。お二人はこんな弾きにくい楽器を弾かれてたんだ! これは弾いてみないとわからないことでした。

チェンバロは倍音が豊かで強弱の表現があまりできない楽器ですが、それがその後フォルテピアノなど色々な過程を経て現代のピアノに至っていることを思い、何か感慨深いものがありました。
いつか弾いてみたいと思っていたチェンバロに触れられてとてもうれしかったですが、帰ってからピアノを弾いて、ああ弾きやすいなと思ったのでした(笑)。

童謡は芸術?

昨日は近所の児童館の「ピアノに合わせてあそぼう」の日でした。雨が降ってたけど、10組以上の親子が来られていたように思います。

季節の歌の中に「チューリップ」がありましたが、前日に簡単なアレンジをしておきました。季節の歌のコーナーでは歌を歌って、その後、子供たちが歌の中に出てくる花や動物などの形に切ってある色紙を壁にぺたぺた貼るのですが、その間私はBGMとして適当にその歌を変奏したりして弾いています。

いつものようにBGMを弾いていると、それに合わせて一生懸命チューリップを歌っている女の子がいました。お母さんも一緒に。2歳くらいでしょうか。なんとかわいい。
私もそのくらいの年ごろに歌っていた、たくさんの童謡をずっと覚えています。

インターネット電子図書館「青空文庫」の中の野口雨情の『青い目の人形』の最初に次のように書かれています。

「童謡は童心性を基調として、真、善、美の上に立つてゐる芸術であります。
童謡の本質は知識の芸術ではありません、童謡が直《すぐ》に児童と握手の出来るのも知識の芸術でないからであります。
童謡が児童の生活に一致し、真、善、美の上に立つて情操陶冶の教育と一致するのも超知識的であるからであります。」

「童謡がすぐに児童と握手できる」って素敵な表現ですね。頭で考えて判断するようになる前に、感じて「好き」と思えることは、その子供が本当に好きなことかもしれませんね。
音楽を習う前に、音楽の喜びを知ることはとても良いことだと思います。


私が2歳の頃聴いて、いつも一緒に歌っていたという懐かしいLPレコードです。

絵と景色と音楽と

18日は京町家ギャラリー「高瀬川・四季AIR」で行われている「小林冬道 VS kuma3 二人展」でオカリナ奏者でもあるkuma3とコンサートをやりました。
小林冬道さんは水彩画、kuma3は色鉛筆の絵ですが、それぞれの個性で素敵な絵をたくさん描かれています。

コンサートはクラシックソロ1曲を除いて、あとは童謡や唱歌、アイルランド民謡など8曲はピアノパートを私が編曲したものをやりました。
17日にリハーサルをやるために、ギャラリーに行って初めて用意していただいた電子ピアノ(ギャラリーにピアノがないので)を触ってやはり最初は違和感ありましたが、お客さんがいても弾いてくれていいと言ってくださったので、合わせリハーサル以外にBGMのように色々な曲を弾いて、楽器のくせをつかもうと試みました。

2~3時間くらい弾いてたでしょうか、どうタッチすればより弾きやすいかわかってきました。
今年初め、ギャラリーでのコンサートで弾きませんかとkuma3に誘われた時、電子ピアノという点は気になったものの、その状況はとても素敵だなと思ってぜひやらせてくださいと言いました。今回、高瀬川の流れが見えるギャラリーで絵を鑑賞し、音楽を聴いていただくというこの企画を実際体験して、やはりいいなと思いました。今日のコンサートは皆さん椅子に座って静かに聴いてくださりそれはもちろんよかったのですが、昨日BGMのように弾いているのもとても楽しかったのです。

ギャラリーという日常と少し離れた場所で、しかも美しい景色を眺めながら音楽を奏でるとはなんと幸せなことでしょう。またこういう状況の中で弾けたらうれしいな。もちろん生ピアノで!

まずは歌ってみる

3月のレッスンで内藤晃さんに教えていただいた、渡邊順生さんのバッハのアーティキュレーションについての解説はとても興味深いのですが、すごーく納得できた方法は引用された、息子C・P・Eバッハの次の言葉です。

「実際楽器の旋律の正しい奏法を会得するには、その旋律をはじめに自分で歌ってみるのは良い方法である。この方法は多くの書物を読んだり、学識ぶった議論に耳を傾けるよりはずっと有益である。」(『正しいクラヴィーア奏法試論』1753)

すばらしいアドバイスだなと思います。音楽は「歌」なのですからね。