「ゴリウォーグのケークウォーク」は楽しいリズム

以前、たまたまネット上で『ヨーロッパ近代音楽とジャズ和声における相互関係の研究』(著者は山本理人氏:㈱宮地楽器企画管理部/小野貴史氏:信州大学教育学部芸術教育講座)という論文を見つけました。

その中に「ジャズからヨーロッパ近代音楽への影響」という項目あって、ドビュッシーがどのようにジャズの要素を取り入れたかということについて書かれています。興味深いなと思ったのでその中から少し引用します。

「ラグタイムは19世紀後半から20世紀への変わり目で盛んになった。もし当時ヨーロッパ大陸で活動していた近代の作曲家がジャズの影響を受けるとすれば、当然その最初期のものはこのラグタイムであったと推測できる。(中略)パリで活躍したクロード・ドビュッシーは19世紀から20世紀にかけての作曲家であり、彼の作品の中にもジャズに関する言葉がタイトルとして用いられるものがいくつか存在しているし、それらの作品には当然のことながらジャズの手法が取り入れられている。たとえば1906年から1908年にかけて作曲されたピアノ組曲『子供の領分』の第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」を見てみよう。この曲は、人形のゴリウォークが、アフロ・アメリカンのダンスであるケークウォークに合わせて陽気に踊る様子を描いていると伝えられている。つまり、ケークウォークとはダンスの一種だがドビュッシーのこの曲で判断するならばラグタイムの変種であると見て差し支えない。」

この曲の、わくわくする独特の感じはそういうことだったのか、なるほどーと思いました。ラグタイムと言えば、ジョプリンのエンターテイナーのような曲を思い浮かべますが、この曲もその一種ということですね。

ラヴェルもジャズに影響を受けたようですが、この論文にも他の作曲家の名前と共に出てきます。論文にはクラシックとジャズがどのように影響し合ってきたのかというようなことが書かれていますが、ドビュッシーの曲にしても、ラヴェルの曲にしても別にジャズには聞こえないし、それぞれが持つ独特のカラーの中にジャズの要素をうまく取り込んでいるのだなと思います。ショパンはバッハばかり弾いていたらしいけれど、ショパン独特のカラーがある。ビル・エヴァンスも家ではクラシックばかり弾いていたらしいけれど、やはりビル・エヴァンスカラーがある。

いいと思うものを自分の中に取り込んで、表現をより豊かにしていくって、素敵だと思います。