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いつか弾きたい曲

ナクソスで久々になんとなくアルベニスのアルバムを聴いていたら、『プレガリア』が流れてきて、はっとしました。12の性格的小品の中の「祈り」という意味のこの曲は、3年ほど前、上原由記音さんのレクチャーコンサートで初めて知ったのですが、きれいな曲だなと思ってその後楽譜を手に入れ弾いてみると、途中から泣けてしまって先に進めないくらい琴線に触れる曲でした。上原さんの話によると、この曲はアルベニスが二人の娘さんを亡くすという深い悲しみを経験した後に作曲されたらしく、そういう曲の背景を知っていることで余計に切なく感じるのかもしれません。
それで、この曲はレパートリーにしてどこかで聴いてもらって感動を共有したいという思いがありながら、弾くたびに激しく心が揺さぶられるので後回しになっています。
音楽と人との関係について色々な本を読んでも、音楽を聴いて心が揺れたり涙が出るのはなぜか?というのはずっと謎のままです。

耳にやさしい自然の音(水のせせらぎ、木の葉のすれ合う音、鳥のさえずりなど)の場合、気持ちが安らぐ気はしても涙までは出てこないので、やはり音楽と自然音では心が受ける影響は違うのかなと思います。自然音でも状況によっては切なく感じたりすることもあることは経験していますが、音楽は状況に関わらずです(どんな音楽でもという意味ではないですが)。
本番などで自分自身が音楽に入り込み過ぎて、流されそうになったことはあります。それではいけないということをチャールズ・ローゼンやその他のピアニストが書いているのをいくつか見ていますし、本番で最良のパォーマンスをするには、演奏中自分を客観視するような冷静さが必要なのだと思っています。
プレガリアはそういう点でまだ自信がないのですが(涙なしに弾く!)、いつか人前で弾いてみたいという思いは持っています。


2012年7月 アルベニスのレクチャーコンサートが行われた錦鱗館前