もう何年も前ですが、音楽療法について調べていた時期があります。高齢者の施設へ行って演奏を始めたのもきっかけだったと思います。音楽療法や音楽と脳の関係などの本を読んだり、音楽療法士に会って話を聞いたり、京都音楽院で行われた音楽療法の研究会のようなものにも参加しました。
音楽療法の目的はいくつかあると思いますが、音楽が脳にどのような影響を及ぼすのか、それがどのように人にとって良い効果があるのか、興味深い点がいくつかありました。
例えば、音楽を奏でるときは(歌も含め)脳の色々な部分が活動する、リズムは脳の運動に関わる部分を刺激する、海馬を刺激して「思い出す」ことに良い影響があるなど。
ただ、その後、音楽療法は誰にとっても効果があるのか、そのことが気になりだしました。
そう思うようになった理由の一つが、私が見た音楽療法の現場の動画です。
その動画は小学生か中学生の子が音楽療法を受けている様子でしたが、その子は電子ピアノの演奏が始まるとそれが気に入らないようで、やめてくれというジェスチャーをしたのです。それ以外の楽器(確か打楽器だったように記憶しています)についても、それほど興味があるようにも見えませんでした。私はその子にとって音楽や音楽によるセラピーが有効だろうか、と思いました。もしかして、音楽に興味がないならあまり意味がないのではと思えてしまいました。
自分が音楽をやっていて、音楽が好きであるからこそ、そうでない人とのギャップを感じることがこれまでも何度もありました。聴いている人より演奏している自分の方が盛り上がっているんじゃないかと思うこともしばしば(笑)。音楽にさほど興味がない、生活の中になくてもそれほど物足りないとも思わない、そういう人はけっこういるんじゃないでしょうか。音楽よりも好きなことがある、周りを見るとそんな人はいっぱいいるように思えます。そういう人たちが歳をとって何かしらセラピーが必要になった時、音楽は役にたつのだろうか?
そんなことを考えているうちに、音楽療法への関心は薄れていきました。
けれども、最近また改めて少し違う風に考えるようになりました。人の心理、無意識の中にあることなど、言語化できないものの大切さについてよく考えますが、それらと音楽のつながりについて興味がでてきました。まだ、ぼやっとしていますが、そこら辺を探っていくことと音楽療法的なことがどこかでつながるのではという気がしています。
万人に役立たなくても、音楽が好きな人、興味のある人のためにできることがあるのではと考えるようになりました。
そういうわけで、音楽による癒し、改善の力についてまた研究していこうと思っています。