ラ ソ ミ

3月に子育て講演会を依頼されており、そのための資料づくりをするため、以前読んだ本を読みなおしたりしています。

今回の資料に含むかわかりませんが、『音楽と認知』(波多野誼余夫/東京大学出版社)という本の中に書かれているちょっと気になることをご紹介します。
童謡や唱歌に出てくる音の並びで最も多いのが、「ラソミ」ということについてです。

ラソミが日本のわらべ唄の基本的な旋律構造である。

童謡や唱歌は、ヨナ抜き音階(長音階の4番目と7番目を抜いた音階、ひふみ(よ)いむ(な)、ドレミソラド)が多いことはよく知られていると思いますが、その中に含まれる3つの音の下降する旋律、ラソミが日本的な旋律ということです(全音音階の曲であっても多いということ)。

ドレミソラドという五音音階は、他の国の民謡やわらべ歌にも使われているけれど、このラソミが日本的な響きをかもし出しているのですね。

実際、ラソミが含まれる歌はどんなものがあるでしょう(音符の長さは無視して音だけならべてみました)。

 ・げんこつやまの、たぬきさん ~ ラララララシ、ラソミミミ

 ・ひらいた ひらいた(なんの花がひらいた) ~ ララソ ララソミ

 ・あんたがたどこさ ひごさ ひごどこさ ~ ミミミソラソラ シソラ シシラソミ

 ・とおりゃんせ とおりゃんせ ~ ララソ ララソミ

 ・かごめかごめ かごの中のとりーは ~ ララシラララ ララララソソララソミ

 ・てるてるぼうず てるぼうず ~ ラララララソ ラララソミ

 ・かもめのすいへいさん ~ ドミソラソミドミソ

 ・おさるのかごやだほいさっさ ~ ミファ♯ミレシレシソラソミ

 ・うみはひろいな ~ シラソミラソミ

 ・おほしさまきらきら(たなばた) ~ シシシレシラソソミ

 ・かきねのかきねの(たきび) ~ ソラソミラソミ

 ・ももたろさん、ももたろさん ~ ソラソソミ、ソソミドレ

京都の通り名の唄も

 ・まるたけえびずにおしおいけ(丸竹夷二押御池)~ ソソソソラソラソ ラソミミミ

このラソミだけを歌ってみてください。どう感じますか? なんとも不思議な旋律だと思いませんか? 浮遊感があるというか、どこにも着地しない感じ。

『シュタイナー教育の音と音楽』(吉良創/Gakken)に次のような記述があります。

わらべ歌の中に現れている下向きの四度の中に、日本人の魂のあり方の、何か大きな秘密があるように思います。

四度とはラからその下のミの音程のことです。この本でも、日本のわらべ歌には四度のインターバルが多く使われていると書かれています。

私も、このラソミに日本人の民族性が感じ取れるかもしれないと思ったりします。

西洋音楽の終止形に比べるとあいまいな感じ。精神性の違いが音楽に現れているのかもしれません。興味深いです。

音楽と心の関係については、これからも調べていきたいと思っているので、ラソミの謎についてもまた考えることがあるかもしれません。

(子育て講演会は、まん延防止等重点措置期間延長のため中止になるかもしれません)