「なんてことない」ことはないです!

村上春樹さんのエッセイ集『サラダ好きのライオン』の中の、「オペラ歌手のシャム猫」の中に、

「僕は昔から音楽が好きで、それなしではうまく生きていけないくらいだけど、でもそのぶん耳障りな音楽には耐えられない体質になってしまっているところがある。
その昔、用事があって原宿のファッション・ビル「ラフォーレ」に行った。フロアを歩いていたら、右手の店からホール&オーツの『アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット』が聞こえてきて、左手の店からスティービー・ワンダーの『パートタイム・ラヴァー』が聞こえてきて、それがちょうど僕の耳あたりでがつんともろにぶつかりあった。それぞれの歌は悪くないんだけど、二つが等格で混じり合うと、不快な騒音以外の何ものでもない。神経にヤスリをかけられているみたいで、頭がぶち切れそうになり、それがトラウマになって(ほんとに)、以来原宿地区にはろくに足を踏み入れていない。
今の渋谷センター街近辺でも、おおむね同じような事態が―音楽の傾向はもちろんかなり変化したけど―日常的に生じている。とくにあの巨大テレビ画面の音声が街路上で混じり合っている様は、ほとんど拷問に近い。でも見たところ、まわりにはぶち切れている人はいないみたいだ。とくになんてことないんでしょうかね?」

というのがあって、ここまで読んで、「いえ、なんてことないことはないです!」と言いたくなりました。
私もけっこう音楽や大音量のスピーカーの声などが気になる方で、どうしてこんなに音を雑に扱うんだろう、と常々思っている(あきらめてるけど)からです。例えばスーパーなどで、建物全体に聞こえるBGMが流れているのに、魚屋の前では別の音楽がながれていたり(だから両方聞こえている)、途中で音楽がぶちっと切れて、お買い得商品の紹介がスピーカーから流れだしたり。
私も、色々な音が混ざってたりしてもみんな平気なんかな? と思っていたことがあるので、そうでない人を見つけた(村上さん!)と、ちょっとうれしかった。

 

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