コンサート」カテゴリーアーカイブ

いつか弾きたい曲

ナクソスで久々になんとなくアルベニスのアルバムを聴いていたら、『プレガリア』が流れてきて、はっとしました。12の性格的小品の中の「祈り」という意味のこの曲は、3年ほど前、上原由記音さんのレクチャーコンサートで初めて知ったのですが、きれいな曲だなと思ってその後楽譜を手に入れ弾いてみると、途中から泣けてしまって先に進めないくらい琴線に触れる曲でした。上原さんの話によると、この曲はアルベニスが二人の娘さんを亡くすという深い悲しみを経験した後に作曲されたらしく、そういう曲の背景を知っていることで余計に切なく感じるのかもしれません。
それで、この曲はレパートリーにしてどこかで聴いてもらって感動を共有したいという思いがありながら、弾くたびに激しく心が揺さぶられるので後回しになっています。
音楽と人との関係について色々な本を読んでも、音楽を聴いて心が揺れたり涙が出るのはなぜか?というのはずっと謎のままです。

耳にやさしい自然の音(水のせせらぎ、木の葉のすれ合う音、鳥のさえずりなど)の場合、気持ちが安らぐ気はしても涙までは出てこないので、やはり音楽と自然音では心が受ける影響は違うのかなと思います。自然音でも状況によっては切なく感じたりすることもあることは経験していますが、音楽は状況に関わらずです(どんな音楽でもという意味ではないですが)。
本番などで自分自身が音楽に入り込み過ぎて、流されそうになったことはあります。それではいけないということをチャールズ・ローゼンやその他のピアニストが書いているのをいくつか見ていますし、本番で最良のパォーマンスをするには、演奏中自分を客観視するような冷静さが必要なのだと思っています。
プレガリアはそういう点でまだ自信がないのですが(涙なしに弾く!)、いつか人前で弾いてみたいという思いは持っています。


2012年7月 アルベニスのレクチャーコンサートが行われた錦鱗館前

『春を感じるコンサート』

内藤晃さんが久々に関西に来られるということで声をかけていただきました。おとといがレッスン、そして昨日はコンサートでした。
レッスンはバッハのパルティータ1番のプレリュードとサラバンドをみていただきましたが、また多くのことに気づかされました。より洗練された音楽を奏でるための大切なことをいくつも。
今回のために用意してくださった資料の中に、私も持っているパウル・バドゥーラ=スコダの『バッハ演奏法と解釈』の中からパルティータ1番のサラバンドについて書かれたものがあったのですが、今まで気づいてなくて「本、読んでくださいね」と言われました(笑)。700ページ近くある本で、600ページ以降にのっていました。買ったときは途中まで読んだんですが、なんせ半分以上装飾音についてでクラクラして、そのあたりからさらさらっと目を通してそのまま本棚に飾ってありました(笑)。

今日の毎日文化センター大阪のピアノはべヒシュタインでしたが、内藤晃さんは本当に楽器のこと、音をコントロールすることを熟知されていると感じました。そして記号化された楽譜の後ろにある音楽を、洗練された音で表情豊かに、生き生きと巧みに奏でられるのでした。
プログラムは『春を感じるコンサート』というタイトルでバロックから現代までと幅広く、例えば吉松隆やセヴラックやメトネルなどの知らない曲が半分以上でしたが、親しみやすいものが多く、きっと配慮されているんだろうなと思いました。
この2日間で、またずいぶんと色々なことを学びました。いい影響を受け少しずつ自分の演奏も変わっていくことを期待します。

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ペトロフのピアノ

今日は京都芸術センター(元明倫小学校)で行われた「ペトロフを愛する音楽会」で弾いてきました。ペトロフはチェコのピアノですが、こちらのピアノは約90年前、元明倫小学校で使われていた古い楽器です。どんな音がするのか、楽しみにしていました。
リハーサルで弾いてみると、少しスカスカしたような感触でしたが、指になじませるように弾いているとどうタッチすればよく響くかわかってきました。丁寧に扱えば小さな音も鳴ってくれる感じです。普通に弾いても良い音が出るピアノはもちろんいいですが、ちょっと気難しいけど気配りに応えてくれるようなピアノも弾きがいがあります。
私はモーツァルト・ハイドン・クレメンティを弾きましたが、その他ロマン派の曲を弾く人、ジャズを弾く人、作曲家で自作を弾く人など色々でした。連弾と歌もありました。
古い雰囲気のある講堂で、古い味のあるピアノを弾くのはなかなかおもしろい体験でした。

『蘇るトルコの響き』

20日、昼間はオカリナのKさんと合わせ練習。とりあえず編曲した「春の小川」「春が来た」「モーツァルトの子守歌」(途中まで)を聞いてもらって合わせてみて大体そのままでいけそうでホッ。なかなかいい感じです。引き続き編曲をやって次の合わせには全部そろえようと思っています。

夜は、パブロ・エスカンデさんのコンサートに行ってきました。日本テレマン協会のマンスリーコンサートで『パブロ・エスカンデ・プレゼンツ 蘇るトルコの響き』です。
曲目はパブロさん編曲によるトルコに関連する音楽(トルコ行進曲から民謡まで)とそれ以外のシューベルトやドヴォルザーク、メンデルスゾーンの弦楽とのアンサンブル曲、パブロさん作曲のチェロとピアノのための曲『2つのミロンガ』(オランダのチェリスト、ナオミ・ルービンシュタインから委嘱された)です。

今回はトルコというテーマがありましたが、エスニック要素をうまく取り入れたな雰囲気とタンゴを思わせるようなリズムにパブロさんのオリジナリティの高さを感じます。そして改めてパブロさんの音楽世界の広さを思い知るのでした。
ドヴォルザークのバガデルop.47ではパブロさんがオランダから持ってきたという100年前のハルモニウムというオルガンの演奏も聴けて、とても興味深かったです。足踏み式で優しい音です。

ミロンガとは、タンゴの基となっている2/4の舞曲ということで、『2つのミロンガ』は1曲目がわりと静かめで、2曲目がリズミカルです。おもしろかったのは、それまでうたたねしてるのかなと思っていた私の前に座っていたご年配の男性がミロンガの2曲目で体でリズムをとりはじめたんです。おお、リズムの力だ!とこれはパブロさんに報告しようと思いました。

終わった後、パブロさんに挨拶して帰りましたが、歩きながらじわじわー、じわじわ―と感動がよみがえってくるようでした。今日初めて聴いてよかった曲がいくつもありましたが、ライブで聴いた音楽はその形をとどめておくことができず、水のように流れていってしまう。でも、その言葉では表せない感動はきっと私の音楽の中に生かされると思いたいです。